令和六年度 定時総会 式辞 日本郷友連盟 会長 森 勉 本日ここにご来賓ご臨席のもと 志を同じくする全国各地の会員各位のご参集を得て、令和六年度一般社団法人日本郷友連盟定時総会を開催出来ます事は誠に喜ばしく、関係者の皆様に心から厚く御礼を申し上げます。 日本郷友連盟の源流は、昭和二十七年に日本がサンフランシスコ平和条約締結により独立を回復した後、国のため一身を捧げた英霊の精神を顕彰し遺族、傷痍軍人その他戦争犠牲者の援護と処遇改善に寄与するとともに、日本の美しい歴史、伝統の尊重、発展、国防思想の普及等を掲げ、日本国家の再生を目指して全国各地で立ち上がった旧兵役に服した方々の思いから発しています。 この思いから全国各地で自然発生的に立ち上がった様々な団体は、都道府県単位に一つの組織としてまとまり、更に全国組織へと動き出し、昭和三十年に日本戦友団体連合会が結成され、翌年に日本郷友連盟と改称され、その名称の下で活動が続けられてきました。 今年度は、日本郷友連盟の前身である日本戦友団体連合会の結成から七十年目の節目に当たります。この四分の三世紀に迫る長い年月の間、「防衛思想の普及」、「英霊の顕彰」、「光栄ある日本の歴史・伝統の継承助長」を三本柱とした郷友連盟の活動は、時代の変化に対応しつつ、延々と続けられてきました。 創設初期の郷友連盟では、戦前の精神的な遺産を大切にして、「大東亜戦争殉国英霊の顕彰慰霊活動」が盛んに行われました。日本郷友連盟主導で昭和三十二年に始まった八月十五日の「大東亜戦争殉国英霊顕彰慰霊祭」は十年後の昭和四十一年には政府主催の国家行事「全国戦没者追悼式」に、また昭和五十一年に始まった英霊にこたえる会主催の「全国戦没者慰霊大祭」齋行へと繋がり今日まで続けられています。全国各地で継承されている郷友主催の慰霊顕彰行事など、連盟創設時の精神は今でも受け継がれています。 昭和四十年代から五十年代にかけて、郷友連盟は最盛期を迎え、連盟各支部の中に「青少年部」「婦人部」「職域支部」が結成され、会員数は四十数万人に達しました。この時期は、日本が戦後の荒廃から立ち直り主権国家として国内的にも国際的にも新たな道を歩み始めた時期であり、連盟としても全国規模の集会開催、街頭行進や街頭で国民に呼びかけるなど、日本国再生を掲げて立ち上がった様々な国民運動団体の先頭に立って活動した時期と言えます。自主憲法制定、自主防衛推進運動等を意欲的に行うほか、北方領土返還要求、日韓国交正常化推進、日中国交正常化の国際同義違反・中華民国との関係維持の政府への要請など、時宜に応じた活動を展開しています。 また、各国の在郷軍人会との交流も行い、昭和四十八年にパリで開催されたWVF(World Veterans Federation)世界在郷軍人連盟の総会に代表団を送り「北方領土返還問題の日本の正統性」を訴え、五十年にはオーストラリアで開催された総会に有末会長自ら代表となる三十数名が参加しています。 この最盛期を経て、戦争体験世代が次第に少なくなるにつれて、郷友連盟の会員数は減少に転じましたが、三本柱の精神を堅持しつつ時代の変化に応じた活動を継続してきています。昭和五十年代後半以降は、英霊顕彰事業を継続しつつ、東京裁判史観(自虐史観等)からの脱却、軽武装経済重視政策による他力本願の国防政策の是正、それらの大元であるGHQ起草の憲法を廃し真に日本人の手による憲法制定を掲げ、活動理念を同じくする諸団体と共同連携した活動を続けてきました。 平成の時代に入り、旧軍関係者が急激に減少して会員のほとんどが戦中・戦後世代になるにつれ、国民運動団体として街頭に立って国民に呼びかけるような活動を行う活力は失われてきました。戦後の混乱期から始まった連盟を取り巻く環境は、大衆動員の時代からデジタル技術を駆使した情報化社会へと大きく変わり、国民の国防、憲法改正、日本の歴史伝統に対する意識にも変化が見られるようになってきています。連盟が数十万人の全国の戦争経験者等を動員して戦後日本の再生を目指す役割を果してきた時代から、IT化の進む世界の中で、それぞれの地域等の特性や参加する人々の個性・特技等に応じた様々な活動が日本古来のアイデンティティーを取り戻す原動力となる時代へと、大きく変わってきました。現在の連盟活動の主要な担い手は、戦後二世代が大部分です。日本社会はその時代から、三世代、四世代の時代になっています。現在の激動する世界情勢、低迷する経済情勢や地球環境の変化等のなかで、今後の日本社会の担い手は育ってきています。 これらの状況から、各県の戦友団体等を束ねる役割を担う組織として発足した連盟の役割は終焉を迎えつつあると認識せざるを得ません。この認識に立ち、先ほどの総会で「今年度をもって連盟としての事業を終了する」ことを決議した次第です。 現下の国内外情勢は大変厳しく、混沌としています。コロナウイルスで経験したような世界的なパンデミックや日本列島に襲いかかる巨大地震は何時起こってもおかしくありません。中華人民共和国やロシアに代表される多くの専制独裁国家と国際社会を牽引している少数の自由民主主義国家の対立はますます激化しています。特に東アジアにおいて我が国は核を保有する専制独裁国家である中華人民共和国・ロシア・北朝鮮と一衣帯水の間で国境を接しています。これらの危機、脅威に対応するためには、憲法改正が急務です。岸田首相は、自分の任期中に憲法改正を発議することを公言しており、連盟の積年の悲願である自主憲法の制定に向けての小さな第一歩を踏み出す期待感と、この時期を逃しては憲法改正の道は遠のくとの危機感の交錯する状況となっています。 このような状況の中、日本郷友連盟は今年度末に活動を終了することを決めたわけですが、これにより連盟が掲げてきた理念、目的にはいささかも変わりませんし、連盟の活動終了は、各県郷友会の独自の活動を規制するものではありません。今後とも地域の特性に応じた活動を継続する各県郷友会へのご支援、ご協力をお願い致しますとともに、今年度は連盟として活動を継続いたしますので、最後までご支援、ご協力のほどお願い申し上げます。 終わりに、会員皆様並びにご臨席賜りました皆様の益々のご健勝とご活躍をご期待申し上げ式辞といたします。 令和六年五月十五日 一般社団法人日本郷友連盟 会長 森 勉 |
令和六年 年頭の辞 日本郷友連盟 会長 森 勉 明けましておめでとうございます。 謹んで栄えある令和6年の新春のお慶びを申し上げます。 畏くも天皇皇后陛下におかせられましては、昨年コロナ禍にもかかわらず即位以降初めてのインドネシア公式訪問を始め国の内外においてご活動あそばされ誠に嬉しく喜ばしい限りであります。 昨年十二月には上皇陛下は目出度く卒寿をお迎えあそばされました。 心から慶賀申し上げますとともに、本年の皇室ご一家の益々のご繁栄称栄を祈念申し上げます。 また、わが国の平和と安寧のため国内はもとより遠く海外の地においても日夜厳しい訓練・勤務に精励されている自衛官の皆様のご苦労ご精進に対し深甚なる敬意と心からの感謝を申しあげます。 昨年の国際情勢については、一昨年生起した国連の常任理事国であり核大国であるロシアによる隣国ウクライナへの侵略は、両軍の多大な損害に加えて現在確認されているだけでも一万人とも言われるウクライナの民間人が犠牲になっている悲惨な戦争が一年十ヶ月も継続しています。 また、イスラエル建国以降幾度も繰り返されてきたイスラエルとパレスチナの出口の見えない紛争は、昨年十月ハマスによる「アルアクサの洪水」と呼称される大規模かつ非人道的な奇襲テロ攻撃に対しイスラエルが自衛権を発動しガザ地区等への空爆、海上からの砲撃、地上軍の反攻等により状況は凄惨なものとなっています。 加えて、アフリカ、中東、アジア、中米等において領土、宗教、民族、資源等に起因する戦争・テロ等が頻発しています。 一方、人類史上何度も人口を半減するほどの猛威を振るった天然痘・ペスト・コレラ等と同様のコロナウイルスによるパンデミックは四年間も継続しており、コロナウィルスの五類感染症移行にもかかわらず未だ日常の活動に大きなそして暗い影を落としています。 国際社会は、ここ数年不幸にして「戦争」と「パンデミック」という人類にとって二つしかいない天敵に同時に対処するという困難な状況に直面する中、冷戦終結以降継続してきた閉塞状況から激動の時代へと変化する兆しを見せており、欧米を中心とした民主主義国家群と中華人民共和国やロシアやグロバールサウスと言われる開発途上国等を含む権威主義国家群との対立と競争という新たな国際秩序が形成されようとしています。 わが国周辺においては、核兵器を保有する専制独裁国家の中華人民共和国、北朝鮮、ロシアと一衣帯水で国境を接しています。 三期目の習近平率いる中華人民共和国は、国内においては経済および政治体制が必ずしも順調でないにも関わらず偉大な中華文明の復活を掲げ国外においては米国との競争・対立を深め、わが国周辺海空域においても活動を活発化しています。 特に歴史的にも国際法上も明らかにわが国固有の領土である尖閣諸島周辺において海警船の遊弋・領海侵犯等は年々エスカレートし看過できないものとなっています。 また、福島の原子炉処理水の海洋放水にあたっての科学的根拠に基づかない言われなき誹謗・中傷・妨害、水産物の輸入禁止措置等は責任ある大国として、またわが国の隣国として越えてはならない一線を超えているように思われます。 金王朝とも言うべき北朝鮮は、ミサイル発射回数を飛躍的に増大し、核実験の再開も示唆され、武器弾薬支援等によりロシアとの関係を親密化しており、その動向は予測不能であり注意深く見守る必要があります。 二十年近く政権を保持しているプーチンのロシアは、核の使用を仄めかし、欧米諸国と対立し、日ロ平和条約締結の交渉を停止し、我国固有の領土である北方四島の軍備を強化し、わが国周辺における軍事活動を活発化する等予断を許さないものがあり、わが国は建国以降最も厳しい安全保障環境に晒されています。 特に、ウクライナ戦争におけるロシア軍は戦争法規を無視し勝者のみが正義と言わんがばかりに民間人を略奪・虐殺・拷問し、学校・病院・発電所等の重要社会施設を破壊し、戦場においては受刑者を前線に送り離脱する者は後方から射殺するという残忍な行為を見せつけ、情報戦、宇宙・サイバー・電磁波領域を含むハイブリッド戦が遂行できるハイテク装備を保有していながら第一次世界戦争の時の塹壕戦のような損耗戦を繰り返しています。 常識では理解し難い極めて異様で怪物のような国家が現代にそしてわが国の隣国として存在することに驚愕しています。 かかる状況を考慮すれば、わが国独自の防衛力の強化と日米同盟のさらなる深化は喫緊の課題であることに疑いの余地はありません。 令和四年末のいわゆる安全保障関連三文書の改定、これに基づく岸田政権による防衛費をGDPの二%に倍増し防衛力を急速に増強することの表明は遅きに失した感はありますが国力を総動員して迅速に実行することが急務であり、本年度予算の編成に大きな期待を寄せています。忘れてはならないことは、ロシアの侵略に対し、たとえ相手が大国であっても、如何なる犠牲を払っても、自国は断固として自らの手で守り抜くというウクライナ国民の強い決意の表明と実践です。 世界の多くの国々はこれに感動し励まされたとえ自国が困難な状況下であってもウクライナの支援を継続していきます。 現在の日米同盟では、自衛隊は防御、米軍は攻撃すなわち盾と矛の機能的役割分担であるため相互不可分の関係であり、加えて先人たちの献身的な努力の結果、自衛隊と米軍の信頼関係は極めて強いものとなっています。 今後は自衛隊も規模は小さくても欠落のない総合的な戦力として整備し日米同盟を機能的役割分担からより政治的選択肢の幅を広げることが出来る量的役割分担に変更するべきであると思います。 これにより専守防衛や非核三原則等の国防の基本政策について検討が可能となります。 連盟の主要な活動である英霊の慰霊顕彰について特に靖国神社への参拝は、憲法が定める信教の自由から政府が関与することが制限されるという微妙な問題や近隣諸国の歴史問題等に起因する感情的な反発もあり、総理の靖国神社への参拝は平成二十五年当時の安倍首相が参拝されて以来菅前首相も岸田総理も真榊料は奉納されているものの直接参拝はされていません。 総理の靖国神社参拝の再開ひいては昭和五十年以降四十八年間途絶えたままになっております天皇陛下のご親拝が実現するよう期待して止みません。 連盟は創設以来自主憲法の制定を訴え続けて参りました。 誇りある日本を取り戻すためには七十六年前、敗戦によりわが国に主権が存在しない時期、占領軍に押しつけられその後時代が急速に変化したにも関わらず護憲の名のもと一言一句改正されなかった傀儡とも言うべき現行憲法を廃棄し日本人自らの手による日本の歴史、伝統、文化に基づいた日本国憲法を制定することこそがその第一歩であると確信しています。 戦後は終わった、昭和は遠くなった等と言われますが、世界にある二百近い国々で、国民が自らの手で憲法を制定することなく占領軍に押しつけられた憲法を金科玉条のごとく崇拝し、占領軍によって否定された世界で最も長く続いている国の歴史や国の成り立ちに殆ど関心を示さない根無し草のような国家が存在するでしょうか。 敗戦により国家としての尊厳、民族としての誇りを失った世界で最後の植民地とも言うべき屈辱的な状態から一刻も早く解放されなければなりません。 本年は国内外ともに厳しく激動の年になることが予測されます。 日本郷友連盟を取り巻く環境もさらに厳しくなるものと推察しますが誇りを持って着実に進んでいきたいと願っています。本年も何卒宜しくお願い致します。 |
令和五年度 総会 式辞 日本郷友連盟 会長 森 勉 本日ここに内外多数のご来賓のご臨席を賜るとともに全国から志を同じくする多くの会員各位のご参集を得て、令和五年度一般社団法人日本郷友連盟総会を開催出来ます事は誠に喜ばしく、関係者の皆様に心から厚く御礼を申し上げます。 日本郷友連盟は旧兵役に服した方々が昭和三十年祖国再建と国土防衛を目的とする日本戦友団体連合会として産声を上げ翌年日本郷友連盟として改称して以来約七十年間にわたってわが国の保守本流の脊柱として活動し大きな影響力を行使してまいりました。 今後は、英霊の慰霊顕彰、自主憲法の制定、北方領土の返還、自衛隊の国軍化等、過去の負の遺産に真摯に向き合うとともに、国内にあっては大東亜戦争の敗戦で失った日本の良き伝統を再生させ、国際的には国連改革、東アジアの厳しい戦略環境の克服、日米同盟の更なる深化等未来に向かって発展性ある問題に挑戦しなければなりません。 さて、コロナウイルスによるパンデミック事態は未だ終息はしないものの概ね低レベルで推移しており各種社会活動も従前に服しつつありますが依然として十分な警戒が必要だと思われます。また、ウクライナ戦争は昨年二月二十四日勃発以来一年二ヶ月以上が経過しましたが依然として終結する兆しはありません。ウクライナ・ロシア両軍は双方多大な損害を出すとともに非人道的なロシア軍の攻撃によりウクライナ国民や貴重なウクライナの学校・病院を含む公共施設が甚大な被害を被っています。 ほとんど天敵のいない霊長類の長たる人間にとって数少ない強力な天敵は、人間自らとウィルスや細菌などの病原体であり、この二つの極めて恐ろしい天敵との歴史上幾度も繰り返された痛ましい戦いを今まさに二つ同時に目の当たりにしています。これらに対し国際社会は協調して対処しなければなりませんが、中華人民共和国やロシアに代表される多くの専制独裁国家と国際社会を牽引している少数の自由民主主義国家の対立が激化しているのが現実です。 特に東アジアにおいて我が国は核を保有する専制独裁国家である中華人民共和国・ロシア・北朝鮮と一衣帯水の間で国境を接しています。このような状況の中わが国の防衛にとって最も重要な事はウクライナ国民と同様に日本国民の自らの国は自ら守るという強い意志、必要な防衛力の整備、そして同盟国等との強い連帯が必要ではないでしょうか。 このような中、日本郷友連盟にとって活動を維持・存続するためには、会勢の拡大、財務基盤の改善等は喫緊の課題であり避けて通る訳にはまいりません。私共は初心を忘れず、一致団結して「誇りある日本再生」のため、より一層の努力精進を重ねる所存であります。皆様の温かいご協力とご指導をお願いする次第であります。 終わりに、会員皆様並びにご臨席賜りました皆様の益々のご健勝とご活躍をご期待申し上げ式辞といたします。 |