令和6年11・12月号より |
こんこんと 水湧く里の 稲の秋 |
相模原 |
折口桂子 |
ふくよかな 母さん案山子 学習田 |
夏負けや 踏み出す一歩の 重きこと |
埼玉 |
川村和栄 |
ふるさとの 稲田の出来を 思ひをり |
夏霧を 汽笛の拒む 豪華船 |
今治 |
嶹谷白涛 |
百日紅 路傍彩る 過疎の町 |
四万十川を 拝して座禅 秋遍路 |
あきる野 |
小和田一男 |
老姉妹 話のはづむ 秋灯下 |
漁火の 沖にまたたく 夜長かな |
館山 |
斎藤一向 |
菊の香に 八十路の齢 重ねけり |
飽食も 飢ゑも忘じて 藷の飯 |
小林 |
高木智念 |
神の田に 結界として 曼殊沙華 |
終戦忌 戦地便りの 文字掠れ |
相模原 |
辰巳一郎 |
溶岩原に 咲きて寂しき 草の花 |
時節とて 変はらぬ銀座 柳散る |
目黒 |
並木桂子 |
数寄屋橋 此処にありきと 散る柳 |
ものの影 くつきりとして 秋兆す |
新宿 |
濱井朋子 |
誰彼の ふと気に掛かる 秋暑かな |
網戸より 居間覗くかに 油蝉 |
小牧 |
松岡魚青 |
小さくも 西瓜と解る 縞模様 |
秋冷や 富士の高嶺に 夕日果つ |
浜松 |
宮本立男 |
身に沁むや 置石だけの 流人墓 |
カーブミラー 覆ひ尽くせる 葛の花 |
小金井 |
三叚寄ナミ |
びゅんびゅんと 舞ふ大鷲の 鳥威 |
終戦日 偲ぶ昭和の はるかなり |
船橋 |
天本宏太郎 |
有り余る 時持て余す 夏休 |
伝はるる 江戸の道楽 朝顔展 |
大阪 |
石原一則 |
朝顔に 一期一会の 思ひ見ゆ |
新蕎麦や 思わず酒を 過ごしけり |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
雨粒の ごと零れゐる 金木犀 |
嬬恋の パノラマライン 秋晴るる |
日高 |
岡崎布喜子 |
魚釣を 孫と愉しむ 秋うらら |
夏萩や 古都一望の 真言寺 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
カンナ咲く 灯台守の 官舎跡 |
令和6年9・10月号より |
さざ波の 浮巣を隠す 余呉の湖 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
木漏れ日の 径譲り合ふ 梅雨晴れ間 |
白球追ふ 日焼けの貌の 逞しく |
相模原 |
折口桂子 |
球場に 校歌流るる 夏の空 |
遠富士の 見え隠れせる 梅雨入かな |
埼玉 |
川村和栄 |
さくらんぼ 仄と色付く 通勤路 |
人生に 後悔はなし 天の川 |
今治 |
嶹谷白涛 |
幸せを 願ひて仰ぐ 銀河かな |
老鶯の 声よくとほる 大社 |
あきる野 |
小和田一男 |
水迅き 魚道を鮎の 光り飛ぶ |
きらら虫 祖母全甲の 通知表 |
館山 |
斎藤一向 |
雲の峰 安房と上総の 国境 |
梅雨滝の 濁世を洗ふごと猛る |
小林 |
高木智念 |
舟遊び 間近に鳰の 声涼し |
忌を修す 尼僧の気韻 寺涼し |
相模原 |
辰巳一郎 |
夏暁や 眠るがごとく 父逝きし |
屋上に 花火を賞づる 顔揃ふ |
目黒 |
並木桂子 |
箱提灯 片隅に置き 待つ花火 |
花菖蒲 妙なる色を 雨に解く |
新宿 |
濱井朋子 |
紫より まづ暮れ初むる 花菖蒲 |
卯の花の 隠せる古窯 札傾ぐ |
小牧 |
松岡魚青 |
先づ父母の 写真に供ふ 桜の実 |
浅間嶺の 噴煙散らす 野分かな |
浜松 |
宮本立男 |
高々と 野分の後の 芙蓉の嶺 |
世界遺産 土足を詫びる 山開 |
小金井 |
三叚寄ナミ |
遠き日の 村いつぱいの 青田風 |
柿若葉 巨樹千年の 威を正す |
船橋 |
天本宏太郎 |
時鳥 故郷の山河 とこしへに |
辻々に 幟掛け合ふ 夏祭り |
大阪 |
石原一則 |
道頓堀 祭を告げる どんどこ船 |
母の日や 事無く一日 送りけり |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
三つ四つ あさざの咲ける 池小さし |
沙羅の花 静かに時の 流れゆく |
日高 |
岡崎布喜子 |
車窓より 指さすかなた 二重虹 |
黒揚羽 影を曳きゆく クルス墓 |
選者 |
有馬澄廣 |
令和6年7・8月号より |
慕はしく 影後先に 紋白蝶 |
日高 |
岡崎布喜子 |
母の日や 玄関飾る カーネーション |
千年の 五輪塔とや 木下闇 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
野面積の 城址に遺る 桐の花 |
茶摘女の 紺の手甲の 甲斐々し |
相模原 |
折口桂子 |
居住ひを 正し新茶の 香を聞きぬ |
葉桜の 風にさやげる 東照宮 |
埼玉 |
川村和栄 |
草刈と 故郷の兄 メール呉れ |
初桜 窓に残して 退院す |
今治 |
畴谷白涛 |
句碑の 路辿ればはるか 春霞 |
半農の 代掻く棚田 日暮れても |
あきる野 |
小和田一男 |
ひそと咲く 庭の草花 蜂を呼ぶ |
白牡丹の 散り敷く姿 あはれとも |
館山 |
斎藤一向 |
日蓮の 衣掛け寺の 紫木蓮 |
山頭火へと 治聾酒の 一升瓶 |
小林 |
高木智念 |
荷台より 牛飛び降りる 牧開 |
春愁や 老いの老い押す 車椅子 |
相模原 |
辰巳一郎 |
芝桜 富士の裾野に 展ごれる |
紫木蓮 一枝一枝に 蕾立て |
目黒 |
並木桂子 |
弓道場 箒目残り 紫木蓮 |
いくそたび 鬢を撫でたる 針納む |
新宿 |
濱井朋子 |
散る梅も 交へ賽銭 奉る |
遅くまで 白髪隠しの 毛糸編む |
小牧 |
松岡魚青 |
笹鳴に 耳を凝らして 友を待つ |
源流を 辿る山旅 新樹光 |
浜松 |
宮本立男 |
山国の 朝日眩しき 新樹かな |
時雨るるや 北山杉の 天を指す |
船橋 |
天本宏太郎 |
老いて知る 人の情けの あたたかさ |
永平寺 警策響き 雪深し |
大阪 |
石原一則 |
雪吊を 解きし名園 一巡り |
俯瞰せる 街春めける 光帯び |
選者 |
有馬澄廣 |
令和6年5・6月号より |
福豆を 一粒得たる 鬼遣ひ |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
うすうすと かげろひ見せて 春の水 |
本棚の 旅の書探す 春近し |
日高 |
岡崎布喜子 |
新学期 子等にぎやかに 朝の路地 |
札所へと 辿る標や 草青む |
神戸 |
鬼本英太郎 |
霞立つ 瀬戸一望の 坊泊り |
漁網干す 残雪の富士 仰ぎつつ |
相模原 |
折口桂子 |
洗はれて 肌滑らかに 春大根 |
卒業証書 手に女学生等 佇つホーム |
埼玉 |
川村和栄 |
冠雪の 富士遠見にも 眩しかり |
春の市 土筆ん坊の 目覚めをり |
今治 |
畴谷白涛 |
潮騒や 河津桜の どつと咲く |
朝取りの ほうれん草並む 道の駅 |
あきる野 |
小和田一男 |
路地見つめ 留守居の猫の 日向ぼこ |
散り際を 風に委ねて 雪柳 |
館山 |
斎藤一向 |
日蓮の 衣掛け寺の 紫木蓮 |
山頭火へと 治聾酒の 一升瓶 |
小林 |
高木智念 |
荷台より 牛飛び降りる 牧開 |
春愁や 老いの老い押す 車椅子 |
相模原 |
辰巳一郎 |
芝桜 富士の裾野に 展ごれる |
紫木蓮 一枝一枝に 蕾立て |
目黒 |
並木桂子 |
弓道場 箒目残り 紫木蓮 |
いくそたび 鬢を撫でたる 針納む |
新宿 |
濱井朋子 |
散る梅も 交へ賽銭 奉る |
遅くまで 白髪隠しの 毛糸編む |
小牧 |
松岡魚青 |
笹鳴に 耳を凝らして 友を待つ |
源流を 辿る山旅 新樹光 |
浜松 |
宮本立男 |
山国の 朝日眩しき 新樹かな |
時雨るるや 北山杉の 天を指す |
船橋 |
天本宏太郎 |
老いて知る 人の情けの あたたかさ |
永平寺 警策響き 雪深し |
大阪 |
石原一則 |
雪吊を 解きし名園 一巡り |
俯瞰せる 街春めける 光帯び |
選者 |
有馬澄廣 |
令和6年3・4月号より |
エンジン音 響かせ初船 毛馬閘門 |
大阪 |
石原一則 |
砂船の 水脈に揺れゐる 浮寝鳥 |
仄暗き 参道虫の 声絶えず |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
散紅葉 昨日のことの はるかなり |
大楠の 樹齢千年 初御空 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
巫女の舞ふ 鈴の音美しき 初神楽 |
軒先に 冬菜干しある 生活かな |
相模原 |
折口桂子 |
ささ流る 岸の冬草 瑞々し |
健やかな ことひた願ふ 去年今年 |
埼玉 |
川村和栄 |
能登地震 互助の声上ぐ 成人式 |
曾孫抱き 四代揃ふ 初詣 |
あきる野 |
小和田一男 |
寒の灯の 代々木八幡 寂として |
初富士を 西に拝む 書斎かな |
館山 |
斎藤一向 |
頃合の 賀状乗せ来る バイクかな |
寒見舞 負けてたまるか 能登地震 |
小林 |
高木智念 |
何事も 無きこと謝する 大旦 |
静かなる 眼光鋭き 初稽古 |
相模原 |
辰巳一郎 |
取り敢へず 薬一服 薬喰 |
初日の出 見逃す寝起き 卒寿なる |
町田 |
永野節雄 |
暖房の 目盛上げをる 寒さかな |
元朝や 地上の平和 ひた願ふ |
目黒 |
並木桂子 |
若水や 老いを忘れて 生き抜かむ |
薄ら日の 揺らめく水面 鳰の笛 |
新宿 |
濱井朋子 |
いと小さき お地蔵様の 背の冬日 |
虫食ひの 仁王の脚の 冬日かな |
入間 |
藤井功風 |
踏み砕き ゆく柚子山の 霜柱 |
冬ざれや 決りの多き 隠れ里 |
小牧 |
松岡魚青 |
好ましき 若狭へ掛かる 冬の虹 |
茫々と 枯野の先の 日本海 |
浜松
|
宮本立男 |
容赦なく 雪の降り継ぐ 被災の地 |
煩悩を 絶つこと難し 除夜の鐘 |
船橋 |
天本宏太郎 |
何となく 人の恋しき 虫の夜 |
放つ矢の 霊気劈く 弓始 |
選者 |
有馬澄廣 |
令和6年1・2月号より |
山門は 風の入口 萩揺るる |
船橋 |
天本宏太郎 |
登高や 汽笛の響く 港町 |
温暖化 秋は年々 萎びをり |
大阪 |
石原一則 |
御講凪 未だ黄ならず 大銀杏 |
ものの影 濃き望月の 夜道かな |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
蔵町を 薄日さへぎり 秋深む |
おだやかに また年重ね 石蕗の花 |
日高 |
岡崎布喜子 |
車止め 言葉交せる 枯木立 |
奥深き 町家の路地や 八つ手咲く |
神戸 |
鬼本英太郎 |
壁剥がる 宿場の裏手 冬菜畑 |
腕組みを して丹精の 菊を観る |
相模原 |
折口桂子 |
信濃平野 抱き浅間山の 冬に入る |
急かされて 衣整へ 冬に入る |
埼玉 |
川村和栄 |
初冠雪と 便りの届く 頃となり |
霊山の 冷え冷えとして 今朝の霜 |
今治 |
畴谷白涛 |
稲田減り 出番少なき 耕耘機 |
稜線の 優しき浅間山 秋深し |
あきる野 |
小和田一男 |
鉄橋に 電車を停む 渓紅葉 |
花八つ手 人影の無き 裁判所 |
館山 |
斎藤一向 |
天平の 刻偲ばるる 後の月 |
鳴き交はす 鵯にもありぬ 相聞歌 |
小林 |
高木智念 |
それぞれが 互み引き立て 秋桜 |
童唄 口遊みゆく 落葉道 |
相模原 |
辰巳一郎 |
ゆくりなき 時雨に遊ぶ ホ句の旅 |
「あれあれ」に 「六甲おろし」の 冬ぬくし |
町田 |
永野節雄 |
朝寒や 日のさし昇る 散歩道 |
狸穴の 暗闇坂てふ 十三夜 |
目黒 |
並木桂子 |
桶の音 響く銭湯 十三夜 |
銘仙に 栄へし古道 草紅葉 |
入間 |
藤井功風 |
秋蝶の 影のすげなく 消えにけり |
雨の間に 余念を捨てて 松手入れ |
小牧 |
松岡魚青 |
休耕田に 色の揺れ合ふ 秋桜 |
返り花 会うて嬉しき クラス会 |
浜松
|
宮本立男 |
ふるさとに 父母の無く 返り花 |
神南備を 鳶の高舞ふ 小春かな |
選者 |
有馬澄廣 |
令和5年11・12月号より |
富士の嶺を 隠し広ごる 秋の雲 |
浜松 |
宮本立男 |
霧島岳の 火口湖巡り 草紅葉 |
沙羅の花 日々好日の わが余生 |
船橋 |
天本宏太郎 |
炎昼や 鉄の匂ひの 鉄工所 |
雨上がり 日に耀へる 蜘蛛の糸 |
大阪 |
石原一則 |
雉鳩の よく鳴く朝の 秋の池 |
蒲の穂の 揺れゐるばかり 森の池 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
蔵町の 水路干上がる 秋暑し |
馴染みたる 単線の駅 雲の峰 |
日高 |
岡崎布喜子 |
墓参り 姉と語らふ 里ことば |
抱一の 生涯ここに 葛の花 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
中秋や 文箱に遺る 母の筆 |
一息を 入れ経唱ふ 秋遍路 |
相模原 |
折口桂子 |
子猫等に 遊ばれてゐる ねこじゃらし |
甲子園に 少年の夏 果てんとす |
埼玉 |
川村和栄 |
街並みを 外れて湧ける 雲の峰 |
瀬戸内の 島々染むる 大夕焼 |
今治 |
畴谷白涛 |
酷暑の日 はつたと睨む 鬼瓦 |
秋暑し 遠見の富士の 模糊として |
あきる野 |
小和田一男 |
折鶴の 色の褪せゐる 原爆忌 |
ドクターヘリ 北へ飛び立つ 秋思かな |
館山 |
斎藤一向 |
小さめの 零余子は摘まず 戻しけり |
走り蕎麦 椎葉に残る 火入れの義 |
小林 |
高木智念 |
九体仏 一尊空位 秋の風 |
露の世や 生くるに難き 濁世かな |
相模原 |
辰巳一郎 |
残さるる ことも定めや 露しぐれ |
虫しぐれ 木彫りの荒き 円空仏 |
横浜 |
永澤 功 |
子規庵の 狭きくぐり戸 萩の風 |
紅白の 芙蓉の映ゆる 路傍かな |
町田 |
永野節雄 |
川縁の 草薙ぎ倒し 秋出水 |
祖父に続き 三世揃ひて 墓参り |
目黒 |
並木桂子 |
盆棚に 子らの土産の 鳩サブレ |
瀧音に 舞ふ病葉の きりもなし |
入間 |
藤井功風 |
開閉の 羽根律をなし 河蜻蛉 |
手を強く 握りし孫や 稲光 |
小牧 |
松岡魚青 |
踊り果て 社のやぐら 闇深し |
山内に しみじみと聴く 法師蝉 |
選者 |
有馬澄廣 |
令和5年9・10月号より |
豪農の 庭にはびこる 小判草 |
小牧 |
松岡魚青 |
緑陰を 恋しと思ふ 季来る |
筑波嶺の 裾に広がる 青田かな |
浜松 |
宮本立男 |
広々と 関東平野の 青田かな |
心まで 緑に染むる 若葉かな |
船橋 |
天本宏太郎 |
瞼閉ぢ 聴く囀と 水の音 |
雨重り して艶失せず 合歓の花 |
大阪 |
石原一則 |
夏霧に 墨絵の如き 延暦寺 |
ただ一人 ゆく林道の せみしぐれ |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
海望む 丘の径や 獺祭忌 |
夕風に 大きく揺るる 花菖蒲 |
日高 |
岡崎布喜子 |
孫子来て 賑はひ募る 盆祭 |
十薬や 村の駐在 人を見ず |
神戸 |
鬼本英太郎 |
梅雨深し 画廊に掛かる 銅版画 |
息災を 拝みくぐる 茅の輪かな |
相模原 |
折口桂子 |
灯籠の 銘も覆へる 苔の花 |
三年の時 経て迎ふ 夏祭 |
埼玉 |
川村和栄 |
夏めける 街の日差しを 眩しめる |
蛍火の 相寄り消えし よりの闇 |
今治 |
畴谷白涛 |
マンシヨンの 窓に優しき 青田風 |
麦藁帽の 破るるを ファツシヨンとし |
あきる野 |
小和田一男 |
咲き分けの 桔梗の揺るる 狭庭かな |
真榊の 祓ひて禰宜の 海開き |
館山 |
斎藤一向 |
電柱の 細き片陰 辿りゆく |
神の牛の 尿憚らぬ 御田植祭 |
小林 |
高木智念 |
刈るまでは 安堵はならぬ 稲の花 |
のけぞりに 空蝉すがる 地蔵かな |
横浜 |
永澤 功 |
葉に憩ひ 旅人めくや 川とんぼ |
鯉跳ねる 水音響く 夏至の朝 |
町田 |
永野節雄 |
梅雨明けを 心待ちして 空見上ぐ |
津軽富士の 空の碧恋ふ 青りんご |
目黒 |
並木桂子 |
青りんごの 出荷見送る 一家族 |
どの家も 辛夷咲きゐる 過疎の村 |
入間 |
藤井功風 |
一両の 電車とことこ 行く春田 |
夏山路 草の深きに 破れ祠 |
相模原 |
辰巳一郎 |
身の丈に 生きむと老いの 更衣 |
荒梅雨に 背山烟れる 御堂かな |
選者 |
有馬澄廣 |
令和5年7・8月号より |
茅葺の 釈迦堂寂と 残花散る |
江の島 |
堀田裸花子 |
蕉翁を しのぶ最上の 風薫る |
ゆつたりと 鳶の舞ひゐる 春の空 |
小牧 |
松岡魚青 |
落日を 浴びて紅増す 八重桜 |
万緑の 中に溢るる 露天風呂 |
浜松 |
宮本立男 |
万緑の 真つ直中を ケーブルカー |
西行を しのぶ吉野や 花吹雪 |
船橋 |
天本宏太郎 |
春潮を 大きく跨ぎ 四国路へ |
実家より 届きし鯨の 幟立つ |
大阪 |
石原一則 |
神門を 潜れば芍薬 宮参り |
菜の花や 雲白く行く 潦 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
菜の花や 小川の隔つ 県境 |
晴天や 一駅歩く みどりの日 |
日高 |
岡崎布喜子 |
声弾む 下校の子等に あやめ咲く |
煉瓦なる 東京駅舎 花の雲 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
摩天楼 望む皇居に 囀れり |
大凧の 題字は「令和」 風を待ち |
相模原 |
折口桂子 |
子等巣立ち 紅寂し 冑の緒 |
儚さを 秘め雨に散る 桜かな |
埼玉 |
川村和栄 |
産土の 参道に映ゆ 花海棠 |
延段へ 木漏れ日の差す 森若葉 |
あきる野 |
小和田一男 |
アルプスを 背に山の 若葉映ゆ |
満開を 湖水に揺らす 桜かな |
今治 |
畴谷白涛 |
満開の さくら俯瞰の 天守閣 |
人住まぬ 館の庭の 余花白し |
館山 |
斎藤一向 |
夏落葉 踏みて遠富士 拝しけり |
湾望む 雀隠れの 台場跡 |
小林 |
高木智念 |
白雲の 湧き立つ故山 夏来る |
白毫の 三世仏在す 春の寺 |
横浜 |
永澤 功 |
鐘楼門 潜り大樹の 青葉闇 |
鯵しらす 食ぶ湘南の 海静か |
町田 |
永野節雄 |
上鰻 卒寿迎へし 祝膳 |
仁王門 甍を越ゆる 鯉幟 |
目黒 |
並木桂子 |
老鶯の 不動の杜に 立て続け |
秩父嶺を 四囲にめぐらせ 花の寺 |
入間 |
藤井功風 |
遠目にも 道とおぼしき 花並木 |
花桐の 香に遠き日の 誌を偲び |
選者 |
有馬澄廣 |
令和5年5・6月号より |
山塊の 血潮を落とす 冬の滝 |
入間 |
藤井功風 |
雑木山 何やら床し 笹鳴ける |
春潮の 崩れむとして 浅葱色 |
江の島 |
堀田裸花子 |
寺守の 丹誠込めて 垣繕ふ |
笹鳴の 一声なれど 心足る |
小牧 |
松岡魚青 |
春浅し 波を立てずに 鯉動く |
春潮の 伊良湖岬に フェリー着く |
浜松 |
宮本立男 |
春の海 島に一人の 小学生 |
禅僧の 作務黙々と 冬の朝 |
船橋 |
天本宏太郎 |
今年こそ 結願せむと 初社 |
寒鮒を 神饌とし供ふ 朝の市 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
咲き満てる 梅を目白の 見逃さず |
世の変転 知るや知らぬや 福寿草 |
日高 |
岡崎布喜子 |
遠足や 老い賑やかに 山路ゆく |
路地裏の 雪垂る音 とどまらず |
神戸 |
鬼本英太郎 |
大阿蘇の 昼月烟る 野焼かな |
掌に包み 温めをりし 木彫雛 |
相模原 |
折口桂子 |
桃の日や 久に睦びし 三姉妹 |
越冬の 白鳥の群 北へ発つ |
埼玉 |
川村和栄 |
乳母車の 子の目の澄める 春の風 |
リード引く 犬の力や 草萌ゆる |
あきる野 |
小和田一男 |
啓蟄の 畑へ打ち込む 鍬光る |
梅林の 香に誘はれ 一人旅 |
今治 |
畴谷白涛 |
梅満開 姿を見せず 鳥唄ふ |
ビニールの 傘連ねゆく 菜種梅雨 |
館山 |
斎藤一向 |
如月や 村にみどり児 誕生す |
水取や 戦の絶えぬ 小さき星 |
小林 |
高木智念 |
野を焼くや 燻る中の 蕗の薹 |
春寒し 地獄絵掲ぐ 焔魔堂 |
横浜 |
永澤 功 |
ベイブリッジを 揺るがすごとく 春の雷 |
川土手の ウオークの径の 春うらら |
町田 |
永野節雄 |
靖国の 開花を待ちて 人集ふ |
家囲む 古木の槇を 剪定す |
目黒 |
並木桂子 |
剪定の 後の果樹園 日の溢れ |
三味の音の 洩れ来る路地の 夕おぼろ |
選者 |
有馬澄廣 |
令和5年3・4月号より |
ふるさとの 壺漬添へし 雑煮膳 |
目黒 |
並木桂子 |
葉を付けし 橙飾り ゐる書棚 |
枇杷の花 盛りなれども ひそとして |
入間 |
藤井功風 |
柚子畑に 木の葉きりなく 降り込める |
水天の 龍神今に 年新た |
江の島 |
堀田裸花子 |
遠富士の 雄姿を惜しむ 冬霞 |
杉玉を 掲げし蔵の 花八ツ手 |
小牧 |
松岡魚青 |
幾月も 訃報知らずに 師走かな |
若き日の 思い出雪の 槍ケ岳 |
浜松 |
宮本立男 |
山小屋の 薪ストーブの とろとろと |
背を正し 歩幅ひろげて ゆく枯野 |
船橋 |
天本宏太郎 |
冬晴や 病窓にある 日の温み |
密を避け 昼に鐘撞く 除夜会かな |
大阪 |
石原一則 |
産土へ 長蛇厭はず 初詣 |
由来碑の 残る社の 石蕗の花 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
干拓地 男ひとりの 冬田打つ |
うから寄り 賑はう二日の 奥座敷 |
日高 |
岡崎布喜子 |
松過ぎや マスクして礼 交しをり |
初漁の 船に群れゐる 鴎かな |
神戸 |
鬼本英太郎 |
手毬つく 三和土の遺る 町屋跡 |
富士を染め 海原を染め 初茜 |
相模原 |
折口桂子 |
何処から となく子等の声 羽根日和 |
参道に 花明りして 石蕗揺るる |
埼玉 |
川村和栄 |
決意秘め 塾へ通へる 受験の子 |
年賀状 仕舞ふ便りに 思ひ馳せ |
あきる野 |
小和田一男 |
ふるさとに 鐘の音渡り 年明くる |
初乗は、 二両編成 内房線 |
館山 |
斎藤一向 |
初渚 開祖日蓮 神楽石 |
残心の 立居の凛と 弓始 |
小林 |
高木智念 |
初芝居 一本刀 土俵入 |
白銀の 富士蒼天に 淑気満つ |
横浜 |
永澤 功 |
初旅や 日向薬師に 詣でけり |
ウオーク路の 社にまずは 初詣 |
町田 |
永野節雄 |
七草として 青菜浮く 粥啜る |
初旅の 峠路に富士 迫り来る |
選者 |
有馬澄廣 |
令和5年1・2月号より |
閉づと云ふ 店に贖ふ 暖房器 |
町田 |
永野節雄 |
霜月の朝 一穢なく 晴れ渡り |
四辻の お地蔵さまの 小春かな |
目黒 |
並木桂子 |
住む町を 臨む高きに 登りけり |
冬紅葉 棚田に影を なしにけり |
入間 |
藤井功風 |
遠望の 雪嶺となる 奥穂高 |
冬日燦 社殿の裏の 政子石 |
江の島 |
堀田裸花子 |
闘病の 妻の微笑み 今朝の冬 |
啄木鳥の 餌を捕る音の 鳴りやまず |
小牧 |
松岡魚青 |
枝毎に 彩を違へて 柿熟るる |
大根を 筑波嶺よりの 風に干す |
浜松 |
宮本立男 |
初時雨 にはかに濡るる 石畳 |
結願の 余韻に浸る 秋遍路 |
船橋 |
天本宏太郎 |
秋天へ 笛の音高く すきとほる |
疫避けて 菊鉢となる 手水かな |
大阪 |
石原一則 |
朴落葉 羅漢の肩に どつと落つ |
初紅葉 苔むす鯉の 供養塔 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
海神の 朱殿の杜の 秋の蝉 |
菊囲み 集う友等の 若やげる |
日高 |
岡崎布喜子 |
一枝を 折り子に諭す 菊のこと |
定紋を 素風に晒し 陣屋跡 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
本陣の 書院の松の 色変へず |
親しげに 小鳥来てゐる 十字墓 |
相模原 |
折口桂子 |
秋蝶の 舞の華やぐ ハーブ園 |
淑やかに 童女札受く 七五三 |
埼玉 |
川村和栄 |
ひらひらと 家路に落ちる 一葉かな |
天高し 城下俯瞰の 天守閣 |
今治 |
畴谷白波 |
皮ぐるみ 食す無花果 給はりぬ |
ハンドベル 心地良き音の 花野かな |
あきる野 |
小和田一男 |
秋色の 湖上に映ゆる 丹の鳥居 |
晩鐘の 長き余韻や 暮の秋 |
館山 |
斎藤一向 |
冬日射し 素顔の火照り 覚えけり |
鳶の輪の 上に鳶の輪 秋高し |
小林 |
高木智念 |
匂ひ立つ 御所の松ケ枝 色変へず |
堂ぬちの 薬師三尊 山粧ふ |
横浜 |
永澤 功 |
ひとり居は 言葉忘るる 火の恋し |
潮鳴りの 波止に人見ず 冬近し |
選者 |
有馬澄廣 |
令和4年11・12月号より |
秋灯や 卓袱台見ゆる 古本屋 |
横浜 |
永澤 功 |
秋蝶の いのち一途に 崖に沿ひ |
朝焼や 西に残れる 月淡し |
町田 |
永野節雄 |
店頭の 秋刀魚に夕餉の 卓おもふ |
新米の 袋揃ひし 道の駅 |
目黒 |
並木桂子 |
田仕舞の 煙の靡く 魚野川 |
おかめ笹 生ふに任せて 滝落とす |
入間 |
藤井功風 |
石垣は 村の名残や 黒揚羽 |
鈴虫や 患ふ妻の 寝息聴く |
江の島 |
堀田裸花子 |
木洩れ日に 恋語るかに 秋の蝶 |
藍色の 匂ふ絞りの 夏暖簾 |
小牧 |
松岡魚青 |
古墳群 蔵する山や 額の花 |
蝉時雨 一族だけの 山の墓 |
浜松 |
宮本立男 |
校内に 残る兵舎や 蝉時雨 |
延命は せずと約束 生身霊 |
船橋 |
天本宏太郎 |
緑蔭や この静けさの 懐かしく |
床下に 妣の鈴虫 逃げて鳴く |
大阪 |
石原一則 |
秋驟雨 篝の爆ぜる 管弦祭 |
ゆくりなく アリア聴く駅 涼新た |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
野分雲 自然に抗ふ 術知らず |
教材の 鬼灯熟るる 校舎裏 |
日高 |
岡崎布喜子 |
散策の 牧場群れ翔ぶ 赤蜻蛉 |
赤富士に 鏡のごとき 山湖かな |
神戸 |
鬼本英太郎 |
啄木鳥や 森の文豪 記念館 |
秋天や 天守聳ゆる 城下町 |
相模原 |
折口桂子 |
虫集く 埋め戻されし 遺構跡 |
甲子園に 夢追ふ球児の 夏果つる |
埼玉 |
川村和栄 |
品格の 色淡くして 百日紅 |
コロナ踏み 消さんと励む 阿波踊 |
今治 |
畴谷白波 |
台風の 逸れて旧家に 虫集く |
尼寺に 炊きの匂ふ 秋の暮 |
あきる野 |
小和田一男 |
アルプスの 池塘に映る 夏の雲 |
推敲の 一語の浮かぶ 鱗雲 |
館山 |
斎藤一向 |
海坂は もとより知らず 虫時雨 |
送火や 五山を禊ぐ ざんざ降り |
小林 |
高木智念 |
寝所に 海鳴り届く 野分前 |
鯊釣の 天蚕糸に 乱れ雲 |
選者 |
有馬澄廣 |
令和4年9・10月号より |
現世に 絶えぬ戦火や 青葉木菟 |
小林 |
高木智念 |
匂ひ立つ 茅の輪潜りて 疫を祓ふ |
沙羅落花 浄土へ還る 色となり |
横浜 |
永澤 功 |
花合歓や ガス灯ともる 港町 |
梅雨深し 元宰相の 訃を悼む |
町田 |
永野節雄 |
緑蔭の 童の像の マスクかな |
鬼灯の 一つ熟れゐる 外流し |
目黒 |
並木桂子 |
ほおづきや 恩師の庭の 垣添ひに |
菩提樹の 皐月闇なす 薬師堂 |
入間 |
藤井功風 |
ひとしきり 茅の輪を前に 立話 |
神主の 代替りせる 海開き |
江の島 |
堀田裸花子 |
富士仰ぐ 島の仲見世 水を打つ |
片陰に 身支度正し 門潜る |
小牧 |
松岡魚青 |
木の間透く とぎれとぎれの 植田かな |
無住寺の 朽ちし土塀の 夾竹桃 |
浜松 |
宮本立男 |
木曾宿の 深き庇の 吊忍 |
現世の 理不尽怒るか 雲の峰 |
船橋 |
天本宏太郎 |
ひたむきに 巣づくり励む つばくらめ |
あかときの 塒へ急ぐ 蚊喰鳥 |
大阪 |
石原一則 |
白昼を 避くる散歩や ねずみもち |
石門の うすむらさきの 額の花 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
花菖蒲 風受け流す 日和かな |
茶の友の 言葉少なに 夏座敷 |
埼玉 |
岡崎布喜子 |
高速の ドライブウエイや 雲の峰 |
雨伝ふ 金剛杖や ほととぎす |
神戸 |
鬼本英太郎 |
水打てる 村を貫く 札所道 |
門柱の 煉瓦寂びゐる 額の花 |
相模原 |
折口桂子 |
見上ぐれば 七つ八つと 棗の実 |
生き生きと 園児ら植うる 甘藷かな |
埼玉 |
川村和栄 |
携帯扇風機 持ち電車待つ 女学生 |
渇水の ダムの潤へる 男梅雨 |
今治 |
畴谷白波 |
乱立の ビル街に雷 轟ける |
子燕の 口開けて待つ 無人駅 |
あきる野 |
小和田一男 |
滝しぶき 浴びるほかなき 苔の巌 |
足裏より 地響き伝ふ 滝仰ぐ |
館山 |
斎藤一向 |
大夕焼 鏡ケ浦を 染上げて |
梅雨鴉 声のくぐもる 杜暗し |
選者 |
有馬澄廣 |
令和4年7・8月号より |
弓なりの 初夏の渚や 真砂女句碑 |
館山 |
斎藤一向 |
なみなみと 水のつらなる 植田かな |
蟻地獄 今朝も戦の ニュースより |
小林 |
高木智念 |
幽谷の 天岩戸の 落し文 |
しきりなる 落花の無音 世界かな |
横浜 |
永澤 功 |
春秋や この身このまま 旅衣 |
梅雨寒や 思はず袖を 伸ばしをり |
町田 |
永野節雄 |
ウオーキング 長袖着込む 走梅雨 |
ピッケルの 男下り来る 班雪山 |
目黒 |
並木桂子 |
雪残る 天下茶屋より 湖望む |
睦まじき 土耳の夫婦の 花筵 |
入間 |
藤井功風 |
木戸文の 風に押されて 花筏 |
神の島 富士をそびらに 初松魚 |
江の島 |
堀田裸花子 |
マロニエの 花散る島の テラスかな |
囀に 深々浸る 露天風呂 |
小牧 |
松岡魚青 |
引き抜きし 菜花離れぬ 鉢の数 |
アルプスを 後盾とし 武者幟 |
浜松 |
宮本立男 |
風の日は 風のなすまま 鯉幟 |
現世の 我も過客や 遍路傘 |
船橋 |
天本宏太郎 |
今少し 遠回りせる 花の宵 |
友の墓 濡るる卯の花 腐しかな |
大阪 |
石原一則 |
浚渫の 船を遠のく 通し鴨 |
藤垂るる 池の澱みの 徒ならず |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
筍の 頭を出してをり 砂置場 |
こどもの日 靴新しき 三歳児 |
埼玉 |
岡崎布喜子 |
掘り立ての 筍届く 休養日 |
葉桜や 露店の並ぶ 札所寺 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
大南風 沖に横たふ 淡路島 |
翡翠の 一閃の瑠璃 美しき |
相模原 |
折口桂子 |
閉店の 老舗書店 街薄暑 |
雪柳 道に映えゐる 白さかな |
埼玉 |
川村和栄 |
行春や ライトアップの 如来像 |
縺れ落つ 蝶を受けゐる チューリップ |
今治 |
畴谷白波 |
薫風に 誘はれゆく 試歩の道 |
竹秋の 山裾をゆく 一輌車 |
あきる野 |
小和田一男 |
旅ごころ 北へ北へと 桜かな |
宝前に 絵馬の揺れゐる 若葉風 |
選者 |
有馬澄廣 |
令和4年5・6月号より |
早朝の 濃霧の隠す 今治城 |
今治 |
畴谷白波 |
霧霽れて 先づ伸び上がる 天守閣 |
花菜風 弾みくるやう 内房線 |
館山 |
斎藤一向 |
木造りの 老舗和菓子舗 雛あられ |
一斉に 首上げ鶴の 引く刻か |
小林 |
高木智念 |
阿蘇五山 紫煙にけぶる 野焼かな |
剥落の 仁王のまなこ 木の芽雨 |
横浜 |
永澤 功 |
白梅の 一輪づつの 矜持かな |
侘助を 誰が供へしか 道祖神 |
町田 |
永野節雄 |
靴下を 重ね履きゐる 余寒かな |
目白どち 出入り自由な 餌台かな |
目黒 |
並木桂子 |
雪洞の やうに膨み 桃咲けり |
テレビ塔 浮かせ棚引く 霞かな |
入間 |
藤井功風 |
一斉に 動き初めたる 木の芽山 |
老梅の 思ひがままの 白と紅 |
江の島 |
堀田裸花子 |
春陰や 賢治の詩碑に 奮ひ立つ |
数見せて 吉報のごと 実万両 |
小牧 |
松岡魚青 |
老いてなほ 夢大いなる 兄の春 |
城下なる 故郷真壁の 雛祭り |
浜松 |
宮本立男 |
世代雛 見せてもてなす 蔵の町 |
底冷や 燭のゆれつぐ 籠堂 |
船橋 |
天本宏太郎 |
疫病や 人をへだてて 寒に入る |
老いぬれば 想い出手繰り 雛飾る |
四街道 |
生嶋千代女 |
妹背山 芽吹きの色の 滲み来し |
てんびんの 近江商人 雛館 |
大阪 |
石原一則 |
子の無病 願ふ薬包 吊し雛 |
底冷の 酒蔵通り 鮒の市 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
船はるか 有明の海 風光る |
探梅や 野路ゆく歩み 弾みをり |
埼玉 |
岡崎布喜子 |
梅の宮 往き交ふ人の 礼嬉し |
舟板を 廻らす旧家 御殿雛 |
神戸 |
鬼本英太郎 |
方丈に ただ一幅の 雛の軸 |
艀船 行きつ戻りつ 運河春 |
相模原 |
折口桂子 |
洋館の アーチの扉 花ミモザ |
武蔵野の 寒気厳しき 没日かな |
埼玉 |
川村和栄 |
雪被る 越後連山 朝日射す |
老鶯や 政子の墓の 寂として |
選者 |
有馬澄廣 |
令和4年3・4月号より |
産土神へ 杖を頼りの 初詣 |
今治 |
畴谷白波 |
独りして 米寿の屠蘇を 酌みにけり |
墨の香に 心洗はる 初硯 |
館山 |
斎藤一向 |
蕾添へ 水仙活けある 山の宿 |
なまはげの 闇より現るる 叫び声 |
小林 |
高木智念 |
三年も 会へぬ子らより 初電話 |
凩や 煌々として 埠頭の灯 |
横浜 |
永澤 功 |
冬霞 汽笛遠くに 消えゆけり |
柚子香る ウオークの後の 湯船かな |
町田 |
永野節雄 |
元朝や 日課のウオーク 捨てられず |
初雪や 静もり在す 六地蔵 |
目黒 |
並木桂子 |
寅年の 松納めたる 門を掃く |
初明り 北の防人 たりしころ |
入間 |
藤井功風 |
初場所や いつもの席に 艶姿 |
獅子舞の 富士をそびらに 渡り来る |
江の島 |
堀田裸花子 |
満潮に 呑まれて果つる 磯どんど |
香の残る 藁青々と 注連作 |
小牧 |
松岡魚青 |
一葉とて 止めぬ柿の 落葉かな |
寄り添ひて 筑波二峰の 眠りけり |
浜松 |
宮本立男 |
発破跡 あらはに加波嶺 寒に入る |
帰り花 老いの身 人の恋しかり |
船橋 |
天本宏太郎 |
深呼吸 して磴登る 菊日和 |
風花や 砂紋整ふ 僧の作務 |
四街道 |
生嶋千代女 |
辻地蔵 塔婆に冬日 濃かりけり |
マンションの ドアの輪飾り 朝日浴び |
大阪 |
石原一則 |
産土に 長蛇の列や 去年今年 |
落ちてなほ 色褪せるなき 紅椿 |
佐賀 |
一ノ瀬恵昭 |
内庭の 真白き梅の 盛りなる |
添書に 百七歳てふ 賀状かな |
埼玉 |
岡崎布喜子 |
羽子をつく 音懐かしき 小路かな |
初旅や 縁切寺は つづまやか |
神戸 |
鬼本英太郎 |
鎌倉は 谷戸多き街 淑気満つ |
野の香り 厨にほのと 薺粥 |
相模原 |
折口桂子 |
粛々と 氏神詣づ 松の内 |
群れ咲くも 香の仄として 冬の薔薇 |
埼玉 |
川村和栄 |
建設工事の 苑に青々 冬の草 |
初凪や 真砂にまみれ 碇綱 |
選者 |
有馬澄廣 |
令和4年1・2月号より |
小春日や 薔薇の風入れ 資料館 |
相模原 |
折口桂子 |
日の匂ひ あふるる園の 蜆蝶 |
休田の 畦に列なす 秋桜 |
埼玉 |
川村和栄 |
稲妻や しとどの雨の 道叩く |
内房の 電車は二両 小六月 |
館山 |
斎藤一向 |
遮断機の 降り来る車窓 枇杷の花 |
追ひ越され 追ひ越してゆく 萩の路 |
今治 |
畴谷白波 |
運命に 長短ありて 秋日落つ |
田の神様 手持無沙汰や 神渡し |
小林 |
高木智念 |
菜を刻む 音の変はりて 今朝の冬 |
馬車道の 瓦斯灯点る 時雨かな |
横浜 |
永澤 功 |
冬霞 汽笛遠くに 消えゆけり |
風の無く 冬立つ朝の ほのぬくし |
町田 |
永野節雄 |
日の燦と 冬立つ朝の ウオーク路 |
海原を 俯瞰の庭に 鰯干す |
目黒 |
並木桂子 |
窓開く 島の分校 海の秋 |
朴落葉 膝と嵩なす 社家の庭 |
入間 |
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