海外戦没者遺骨収集事業に参加して
新潟県郷友会 陸 信夫    

  「祖国の未来に殉じた、英霊を慰め、戦争を知らない私たちの未来を開く心の警鐘に」私は、約35年間の航空自衛隊勤務に続き9年間の会社勤務が終わろうとしたとき、3・11という未曽有の大災害に遭遇しました。
そこで64歳の私がお役に立てることは何かと考えていたら、自衛隊人生での思いにいたりました。

 私は歴史に興味を持ち戦史に触れつつ、先の大戦・大東亜戦争の開戦の経緯と終戦に至った諸々の考察を重ねていました。 自分なりの結論を出してはいたものの納得できずにいたことは、未だ祖国に 帰られずにいる113万余柱のご遺骨に対する想いでした。

 一般的に、戦争は政治外交に始まり直接の戦争戦闘を経て、戦後処理の完了によって終戦となります。その意味から、ご遺骨が戦地に残されたままで大戦の終結といってよいのだろうか。 「国破れて山河在り」…現代社会のさまざまな言動のありさまや諸々の考えに囚われ悶々としていたときに、JYMA(日本青年遺骨収集団)の活動を知りました。JYMA隊員の年齢制限は45歳でしたが早速に申し込み、元自衛官として面接し入隊がかないました。以来、ガダルカナル島、沖縄、硫黄島、ミャンマー等での活動に参加してきました。

   
   ガダルカナル島海岸に残る日本軍軍艦

 ここでJYMAについて少し説明したいと思います(詳しくはネットでの検索をお願いいたします)。特定非営利活動法人JYMA日本青年遺骨収集団は、昭和42年に有志学生を中心に「学生慰霊団」として発足しました。昭和47年には戦没者遺骨収集促進団体協議会に加盟し、420回にわたり延べ約2千名の青年・学生諸君が大戦の激戦地に赴き、戦没者のご遺骨を祖国にお迎えする奉仕活動を展開してきました。

 この民間ボランティア団体は、心ある企業や個人の支援によって平成29年に50周年を迎えました。活動の旅費の一部は自己負担です。ある青年(32歳・会社員)は、5年毎の長期休暇を利用して硫黄島で汗を流しました。また、現役女子大生はアルバイトでその資金を捻出し参加しました。ある主婦は何とか時間をやりくりして参加しました。まさに心ある青年たちが私費を投じてこの尊い活動に身を挺しているのです。

   
   ペリリュー島の海軍施設跡

 出かける先は熱帯のジャングルであったり山奥に分け入った りと条件の厳しい中で、不平不満を口にせず黙々と作業する彼らと活動をともにして、彼らの心に日本精神が息づいているのを感じ、彼らの姿から明るい日本の未来を確信することができました。

 50年にわたる彼らの地道な活動が評価され、JYMAは平成27年3月に、一般社団法人倫理研究所「地球倫理推進賞」国際部門、文部科学大臣賞を受賞しました。活動に携わった全員に
心からの感謝と尊敬の念を込め拍手をおくりました。

 この活動は観光旅行と違って華やかさもお土産もありませんが、その貴重な経験は忘れられない人生の素晴らしい宝物になります。JYMAこの体験を一人でも多くの若人にしていただきたいと思っています。

 JYMAは会の活動に賛同し一緒に活動してくれる、『万人に一人』の憂国の人士を求めています。また、戦没者遺骨収集促進団体協議会の活動が実を結び、平成28年3月の国会において「戦 没者の遺骨収集の推進に関する法律」(平成28年法律第12号)が全会一致で成立し、翌月の1日より施行されました。そして国の指定法人として一般社団法人日本戦没者遺骨収集推進協会が設立されました。法律が成立した年の12月、ガダルカナル島から海上自衛隊護衛艦「たかなみ」に乗って、ご遺骨が帰還されました。ご英霊の皆様のお気持ちはいかばかりであったでしょうか。しかし、この法律は10年間という時限立法であり、10年以内に現在の組織と予算で旧大東亜共栄圏に眠る113万余柱のご遺骨の帰還がかなうのか気がかりです。

   
   ガダルカナル島の慰霊碑

 この活動は終戦直後から戦友会と遺族会を中心に進められてきましたが、戦後72年を経てたくさんあった組織が衰退・減少しているというのが残念な現実です。資料によれば、事業等の推進に関する予算は今年度が約24億4千4百万円、来年度の予算要求は25億5千万円と微増です。予算が大きく拡大しない要因は、受け皿となる組織・人員が確保されていないためと、現在の状況での組織拡大が不可能であるためと思われます。

 私たちは、崇高な憂国の精神が現政権において結実し法律が整備された今、この事業を大きく前進させなければなりません。 この法律を梃(つえ)とし、憂国の同志を募り、速やかに参加可能な人員を確保すべきと考えます。ぜひともこの活動にご参加ご協力をよろしくお願い致します。
 
畏れ多くも、今上陛下におかれましては、一貫して戦没された皆様に御心をおよせくださり、また高齢のお体をおして国内外へ慰霊の旅を続けてくださいました。国民の一人として、その尊い御姿に倣わないわけにはまいりません。一刻も早い、一人でも多い、戦没者のご遺骨ご帰還のために一緒に頑張りませんか。

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